妖精（ようせい、フェアリー）は、西洋の民間伝承や文学、神話に登場する神秘的な存在で、小さな体を持ち、魔法の力や自然とのつながりを持つとされています。妖精の歴史は長く、地域や時代によって描かれ方が異なります。以下に、妖精の歴史の概要を示します。
古代の妖精観
•起源と信仰
妖精の概念は、古代ケルト文化やゲルマン神話にその起源を持つとされます。ケルト神話には、「トゥアハ・デ・ダナーン」という神々の一族が登場しますが、後に妖精として伝承される存在の起源とされています。
•彼らは、自然や霊界に関わる存在とされ、土地や自然の守護者と見なされました。
•古代の人々は、妖精が土地を豊かにし、悪い運命から守ってくれると信じ、儀式や供物を捧げました。
中世ヨーロッパの妖精
•中世の文学と妖精
中世のヨーロッパでは、妖精は伝説や物語の中で広く語られるようになりました。
•「アーサー王伝説」には、湖の乙女（レディ・オブ・ザ・レイク）や魔女モーガン・ル・フェイが登場し、妖精のような力を持つ女性が描かれています。
•妖精は、人間を助ける者、もしくは試練を与える存在として描かれることが多く、物語の中で重要な役割を果たしました。
•キリスト教の影響
中世にキリスト教が広がると、妖精は「堕天使」や「悪霊」と結び付けられることがありました。これにより、妖精は善悪の両面を持つ存在として描かれるようになりました。
ルネサンス期の妖精
•文学の黄金時代
ルネサンス期には、妖精は再び文学で注目を集めます。
•シェイクスピアの『夏の夜の夢』では、妖精たちは自然や愛を司る軽やかな存在として描かれました。オベロンやティターニアといったキャラクターが有名です。
•この時代の妖精像は、遊び心があり、愛らしいものとして広まりました。
近代における妖精
•ヴィクトリア朝時代
19世紀のヴィクトリア朝では、妖精は子どもの純真さを象徴する存在として再び注目されました。この時代には、多くの妖精を描いた絵画や詩が制作されました。
•例えば、アーサー・ラッカムやジョン・アトキンソン・グリムショーの妖精画が有名です。
•妖精は庭や花の中に住む小さな存在として、愛されるイメージが強まりました。
•妖精写真事件
1920年代に「コティングリー妖精写真事件」が発生しました。この事件では、少女たちが妖精と一緒に撮影したとされる写真が話題になり、妖精の存在が再び注目されましたが、後に作り話であったことが判明しています。
現代の妖精
•ファンタジー文化の中の妖精
現代では、妖精はファンタジー文学や映画、ゲームなどで広く描かれています。
•トールキンの『指輪物語』に登場するエルフは、妖精の一形態とされます。
•ディズニー作品のティンカー・ベル（『ピーター・パン』に登場）も、妖精の象徴的なキャラクターです。
•スピリチュアルな存在として
現代のスピリチュアルな文脈では、妖精は自然界の精霊として捉えられ、人々が自然との調和を取り戻す助けとなる存在と考えられています。
まとめ
妖精は、文化や時代の影響を受けながら進化し続けてきた存在です。
古代の自然の守護者、中世の魔法的存在、ルネサンスの愛の象徴、そして現代のファンタジーの主役として、多くの人々の想像力を刺激し続けています。
